令和2年 「喜怒」

 人類への警鐘か、コロナ禍に揺れた地球。子年が終わる。豪雨災害、許せない不祥事・事件、亡くなった方々、そして若者たちの快挙、スポーツの力…喜怒哀楽があった1年。

◆喜◆
【藤井聡太2冠「盤上の不変」】

 将棋の高校生棋士、藤井聡太七段(17)が7月、「第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」(産経新聞社主催)を制し棋聖位を獲得。8月には「第61期王位戦七番勝負」(新聞3社連合主催)でもタイトル奪取。18歳1カ月での2冠と八段昇段は最年少記録。
 奈良・興福寺旧境内で11 世紀中頃の日本最古の駒が見つかっていて、平安時代から”将棋”は指されていた⁈
 日本人男性で一度も将棋を指したことのない人は少ないのでは…81マスを動く王将、飛車、金将、桂馬、歩兵などそれぞれの好守。盤上は美しく、さながら戦国時代の陣も思い起こさせる。
 今の将棋界もAI(人工知能)時代と言われる。藤井2冠は棋聖位獲得時に「AIは対決を超えた共存の時代。今の時代でも盤上の価値は不変、そういう価値を伝えていけたらと思う」。17歳にして深い言。
 残念ながら、日本で独自の成長を遂げてきた将棋人口は漸減が続く。国際的にほぼルールが統一されてきた囲碁に比べ、駒が漢字で書かれていることなども国外普及の妨げとも言われるが…だからこそ日本の心が投影され、魅力的勝負が展開される。それがまたいいじゃないか。

◆怒◆
【「めぐみ会いたい」横田滋さん死去】

 拉致被害者家族会の初代代表、横田滋さんが6月に亡くなった。87歳。
 1977年(昭和52年)に北朝鮮に拉致された横田めぐみさん(55)=拉致当時(13)=の父で、妻の早紀江さん(84)と全国で講演し被害者奪還を訴え続けた救出運動の象徴的存在。半生かけた「めぐみに会いたい」…かなわず、悔しく腹立たしい。
 1980年(昭和55年)、産経新聞・阿部雅美記者がスクープした拉致被害者報道。国内ではしばらく取り上げられる事もなく、小泉政権時代、2002年(平成14年)ようやく帰国した蓮池薫さん(62)らは、筆者と同年代だ。
 拉致は紛れもなく国家犯罪だ。
 遅い、遅すぎる。拉致問題に力を入れてきた安倍自民党政権でさえ…被害者の奪還、遅々として進まない国家間の現代の壁。結果こそ、政治力とは何なんだ!
 父滋さん、母早紀江さん、娘めぐみさんらが家族を思い祖国を思い続けて42年。魂の訴え、その思いに寄り添えない現実…滋さんは父として無念だろうが、娘を取り戻す事、拉致被害者を救い出す事に尽くし切った見事な生涯だった。

 信念と絆の大切さ。そして諦めず、また前を見る…人には必ず、その力があるはずだ。
<2020.12.28  S>

*報道コラム「ニュース喜怒哀楽」を振り返ります。今週の続き「令和2年 哀楽」は大晦日に伝えます。S