球児の直球 甲子園映え

 プロ野球阪神の藤川球児投手(40)が、甲子園球場で最後のマウンドに上がった(10日)。巨人との引退試合の九回に登板し全直球勝負。22年間の現役を終えた。

◆「ホップする」「直球と分かっていても打てない」「バットがボールの下で空を切る」。数々の強打者たちに言わしめた剛速球。米大リーグ時代と合わせて日米通算245セーブ、あと5つで大台250セーブだった。
 1999年にドラフト1位で阪神に入団し「松坂世代」の一人。2005年リーグ優勝に貢献、07、11年に最多セーブのタイトル獲得。13年から米大リーグ・カブスなどでプレーした後、「子どもたちに夢を」と独立リーグの四国アイランドリーグplus高知に…故郷の地に戻り勇姿を見せたのは、感謝の思いがあったのだろうか。そして16年から再び縦ジマのユニフォームを着た。

 野球はチームプレーだ。とともにプロは、個人技の集合体でもある。全身全霊の跳ねるような投球は個性あふれ、強打者との真剣勝負は見る者をワクワクさせ、プロの魅力十分だった。

◆新型コロナ禍に、盛大な阪神球団セレモニーとなった。リンドバーグ渡瀬マキさんがサプライズ登場、家族からの花束、対戦選手からのビデオメッセージ…不祥事で、表舞台に出ていない清原和博元選手の声も。そして締めは、バッテリーを組んできた矢野監督(51)へ投げ込む”最後の一球”になった。2010年9月30日、矢野捕手(現監督)の引退試合。最終回2死から登場予定だった矢野捕手。しかし藤川投手が逆転3ランを浴び、引退試合なのに矢野捕手出場なし…やっと”10年越しのバッテリー”となった。

 特別な選手を裏付けた演出。それだけにふと思ってしまった、今季で縦ジマのユニフォームを脱ぐ能見投手(41)や福留選手(43)らを。引退ではないとは言え、阪神に残り先々の指導者をにらんだ道もなかったか? 今の阪神ベンチは中日OBや⁉とも囁かれたり…あまりに冷たくないか球団よ。

◆最後のマウンド上。藤川投手に涙はなく、終始さわやかな笑顔で語った。
「僕のストレートには甲子園の大応援団のみなさん、全国のタイガースファンの熱い思いが詰まっています。それが火の玉ストレート。打たれるはずがありません!」。
 何か気恥ずかしくなるような、今の時代ダサいと言われそうな言葉。だが、一筋に来たからその”直球言葉”がよく似合っていた…「幸せな時間でした」。

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<2020.11.16 S>