伝える力 2人の日本人

◆世界3大映画祭の一つ、ベネチア映画祭で「スパイの妻」の黒沢清監督(65)が銀獅子賞(監督賞)に輝いた。脚本も手がけ、1940年代の夫婦(蒼井優、高橋一生)と太平洋戦争を描いた。日本人が銀獅子賞を獲得したのは、「座頭市」(2003年)の北野武監督以来17年ぶり。
 国家と夫婦、愛、疑惑、嫉妬…サスペンス、社会性、ヒューマニティが絡み合う作品。戦時下の状況、情景も美しく映像化された。イタリア人記者は「これまで見たコンペ作品の中でベスト。特に困難な状況下の女性心情の描き方は素晴らしい…」と絶賛。
 黒沢監督は神戸市出身で、還暦を過ぎてからの歴史もの初挑戦だった。受賞インタビューでは「いろんな作品が撮れる可能性が広がってくれるといいなと思う。より新しい、やったことがないことに、もう一歩チャレンジできるのかなと」と…今なお青春のような笑顔を見せた。

◆大坂なおみ(22・日本)が、全米オープンテニス決勝で元世界女王のビクトリア・アザレンカ(31・ベラルーシ)を1-6、6-3、6-3で下し、2年ぶりの優勝。復活しただけでなく、本物の強さを見せた。
 初戦から決勝まで入場のマスク7枚に名前が書かれていた。人種差別や警察官暴行で亡くなった黒人被害者の名前。「私はアスリートである前に、一人の黒人女性です」と、一貫した発信を続けた。メンタルの成長、強さを見せた。コロナ禍で練習も十分にできない中、「チームなおみ」の存在も心強い。大坂から”厳しいおじさん”と言われる中村豊トレーナー(48、6月就任)とのフィジカル強化も、大きな後押しになった。
 今回もまたインタビューの受け答えが魅力的だ。優勝を決めた後、コートに仰向けに寝転んだ。色々な思いが頭をよぎったはすだが…「試合が終わってみんな崩れ落ちたりするけど、私は怪我をしたくないので寝転びました」。そして相手を称え、仲間に感謝する言葉…いつも自然に、日本人女性の思いやりがにじみ出る。

諦めない 世界魅せた
<2020.9.14 S>