17歳・藤井棋聖 新時代

 将棋の高校生棋士、藤井聡太七段(17)が現役最強と言われる渡辺明棋聖(36)=棋王・王将=に挑戦していたタイトル戦「第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」(産経新聞社主催)。第4局が大阪市の関西将棋会館で指され、藤井七段が3勝1敗で初タイトルとなる棋聖位を獲得した(16日)。
 17歳11カ月でのタイトル獲得は、屋敷伸之九段(48)が持つ最年少記録(18歳6カ月)を30年ぶりに更新し初の現役高校生タイトルホルダーとなった。

◆将棋界もAI(人工知能)時代と言われる。藤井新棋聖は「AIは対決を超えた共存の時代。今の時代でも盤上の価値は不変、そういう価値を伝えていけたらと思う」。17歳の言に恐れ入る。
 棋聖戦4局中、1時間を超える長考があった。「ミスもあった」と語った。人知を上回る計算・分析力を持つAIに”ミス”はなく、そして長考もしない。しかし、盤上に繰り広げられる喜怒哀楽もAIにはない…心揺さぶる一手は人にしか指せない。

◆ 奈良・興福寺旧境内で11 世紀中頃の日本最古の駒が見つかっている。平安時代から”将棋”は指されていた。
 筆者も含めアラ還(還暦)世代で、一度も将棋を指したことのない人はいないのではないか?…81マスを動く王将、飛車、金将、桂馬、歩兵…それぞれの好守。盤上は美しく、さながら戦国時代の陣を思い起こさせる。
 
 残念だが、日本で独自の成長を遂げてきた将棋人口は漸減が続く。国際的にほぼルールが統一されてきた囲碁に比べ、駒が漢字で書かれていることなども国外普及の妨げとも言われる。それゆえに日本の心が投影され、魅力的勝負が展開される。それがまたいいじゃないか。

◆藤井新棋聖の出身地・愛知県瀬戸市は沸いた! 師匠の杉本昌隆八段は「聡太小学生に会った時から、この日が来ることを確信していた。東海に持ち帰ったタイトルが嬉しい」と語った。藤井新棋聖は「入門の時からずっとお世話になってきました。一つ恩返しができたかな、と思っています」。
 タイトル獲得を決めた第4局の将棋めし(対局間の食事)は「みそ煮込みうどん」。地元愛を感じるが?と会見で聞かれ、「えっと、あまり深い理由はないんですけれど、みそ煮込みうどんは愛知県の名物でもあるので、それで結果を残せてよかったかなと思います」。そして「地元の方に支えられて…地元にまたいい報告ができる」と緊張がとけたいつもの微笑みを見せた。
 師匠に、育った故郷に感謝する…心映えも素晴らしい。これも強さの秘訣ではないか。

◆タイトル獲得から3日後、18歳の誕生日を迎えた新棋聖は「今までと変わらず、自然体で臨みたい」。さらに「自分としてはピークは24歳〜30歳くらいではないかと思います」と、いつものように淡々と語った。

 21歳2カ月の史上最年少名人の記録を誇る谷川浩司九段(58歳、前将棋連盟会長)は「すでに棋界4強の1人…他の3人が同じようにレベルアップするか、藤井新棋聖ひとりが抜け出すのか」と評した。
 江戸時代から続く棋界”最強”の名人位。藤井名人誕生も、そう遠くはないはずだ。

将棋道 貫いてつなぐ
<2020.7.27 S>