「めぐみ 会いたい」

 拉致被害者家族会の初代代表、横田滋さんが5日亡くなった。87歳。
 1977年(昭和52年)に北朝鮮に拉致された横田めぐみさん(55)=拉致当時(13)=の父で、妻の早紀江さん(84)と全国で講演し被害者奪還を訴え続けた。救出運動の象徴的存在。半生かけた「めぐみに会いたい」…悲しく悔しい。

◆1980年(昭和55年)、産経新聞・阿部雅美記者がスクープした拉致被害者報道。国内ではしばらく取り上げられる事もなく、小泉政権時代、2002年(平成14年)ようやく帰国した蓮池薫さん(62)らは、筆者と同年代だ。

 拉致は紛れもなく国家犯罪だ。
 安倍晋三首相は「早紀江さんとともに、その手でめぐみさんを抱きしめる日が来るように全力を尽くしてきたが、実現できなかったことは断腸の思い。本当に申し訳ない思いでいっぱいだ」と述べた。
 
 遅い、遅すぎる。拉致問題に力を入れてきた安倍自民党政権でさえ…被害者の奪還、遅々として進まない国家間の現代の壁。突き詰めれば”戦”に行き着くのか。無難でなく結果こそ、政治力とは何なんだ。

◆いま人気の大河ドラマ「麒麟がくる」。主人公明智光秀の三女、乱世に翻弄された細川ガラシャの時世の句(1600年)が、なぜか浮かぶ。
散りぬべき
時知りてこそ
世の中の
花も花なれ
人も人なれ

 めぐみさんの思い、母早紀江さんの思いを、そうさせてはならない。

◆父滋さん、母早紀江さん、娘めぐみさんらが家族を思い祖国を思い続けて42年。魂の訴え、その思いに寄り添えない現実…滋さんは父として無念だろうが、娘を取り戻す事、拉致被害者を救い出す事に尽くし切った見事な生涯だった。
 家族の絆の大切さ、人への感謝を改めて知る。そして諦めず、また前を見る…人にはその力があるはずだ。

信じたい 命の限り
<2020.6.8 S>

*4月から「ラジオ産経」。この報道コラム「喜怒哀楽」は、人を出来事を見つめ続けていきます(原則月曜・不定期)。よろしくお願いします。S