寅さん よっ!令和2年

♫俺がいたんじゃ
お嫁にゃいけぬ 
わかっちゃいるけど 
妹よ…♫

 山田洋次監督(88)による国民的映画「男はつらいよ」シリーズの50周年記念作品、「お帰り 寅さん」を観た。1969年第1作が公開されてから50年、97年の「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」以来、22年ぶりに製作された。96年に亡くなった車寅次郎・渥美清、妹さくら・倍賞千恵子、さくらの夫博・前田吟、甥満男・吉岡秀隆ら…歴代マドンナは後藤久美子、浅丘ルリ子、八千草薫らが花を添えた。

◆映画館で3回くらい、年末年始のテレビ映画でも数回、ファンとは言えない。だが亡き渥美清=寅さんと、今回の出演者たちが映像的にどう絡むのか興味もあった。やはり齢のせいか台詞がこんなに素晴らしかったのかと、迫ってくるとは…そして笑いと涙のなかに、一人じゃないんだ正直でいいんだ!人生エールを送る日本映画。できれば若い世代にも観てほしい。

◆東京単身赴任、東日本大震災(2011年)の翌年、休日に柴又の帝釈天を訪れた。駅を出ると寅さん像があり(今は妹さくら像も加わった)、寅さんそのままの格好をした”観光PR人”もいた。参道の店で昼酒、その勢いで寅さん記念館ではセットに座り写メを撮り、山田洋次ミュージアムにある監督の言葉に感動した記憶がある。
 誤解恐れずに言えば「お帰り 寅さん」の台詞一つ一つが、山田洋次監督の”遺言”に聞こえてくる。

◆会話シーンが実にいい。
 妻を亡くしサラリーマンから小説家に転身した甥・満男(吉岡秀隆)と、中学生の一人娘ユリ(桜田ひより)。行き詰まり気味の満男の書斎に来て、ユリが遠慮気味に「ちょっと話があるんだけど…邪魔だったら後ででも」。満男が振り返り静かに「君と話すこと以上に、大事なことなんてないんだよ」。

 人って何のために生きてるんだろうと満男に聞かれ、寅さんが言う。「あぁ産まれてきて良かったなぁ、て思うことがたまにあるだろう。そのために人間生きてんじゃあねえかい」。
 「困ったことがあったらな、風に向かって俺の名前を呼べ。おじさん、どっからでも飛んできてやるから」。
 昭和、平成、令和…時代は変われど、変わらぬものがある。

おいっ! 人はつなぐんだろ
<2020 1.6 S>

*あけましておめでとうございます。この報道コラムも今年100回を迎えます…喜怒哀楽を変わらず見つめ続けていきたいと思います。よろしくお願いします。S