命貫いた 「ドクター中村」

 アフガニスタン東部ナンガルハル州ジャララバードで、農業支援などの活動をしていた日本人医師・中村哲さん(73)の 乗る車が武装勢力に銃撃され死亡した(4日)。
 犯行声明は出ていないが、イスラム原理主義勢力タリバンは「日本のNGOは復興に力を尽くしている。標的にしたことはない」と異例の完全否定声明を出した。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の関与が疑われている。

◆アフガンのガニ大統領はテロと断定。哀悼の意を示し「人々は彼の仕事をいつまでも覚えているだろう。このような残虐行為は、アフガンの進歩と繁栄のために働くという国民と国際的パートナーの決意を阻止することはできない」と強調した。

◆世界を震撼させた「9.11」テロの首謀者、ウサマ・ビンラディン容疑者が潜伏したアフガン。内紛や戦闘が頻発、難民もあふれ、壮大な大地があっても穀物は全く育たない。 「命を救うためには今、100人の医師より水だ」と、中村医師は白衣を脱いだ。水がない干上がった地、砂漠に数年かけて用水路を作った。銃をクワなどに持ち替えた傭兵たちもいた…大地に稲が緑が実った。
 アフガンでは生きるために戦闘員になる若者がいる。中村医師は、かつて「食べること生きること以外はすべて、この地では贅沢なんです」。そして大国を痛烈に批判したこともある。

◆2018年、非政府組織「ペシャワール会」(福岡市)の現地代表である中村医師は、貧困層への医療支援や灌漑事業に尽くしたとしてアフガン政府から国際勲章を授与された。2003年にはアジアのノーベル賞ともいわれる「マグサイサイ賞」、日本でも2016年に秋の叙勲「旭日双光章」を受章。菊池寛賞や城山三郎賞も受賞している。

◆中村医師の妻尚子さん(66)と長女秋子さん(39)は6日首都カブールに到着、遺体と対面…「頑張ったね」「お疲れさまでした」と語りかけた。
 2人とともに帰国の途につくカブールの空港でも、アフガン政府主催の追悼式典が行われた。中村医師の棺を担いで行進する軍兵士らの先頭は、ガニ大統領だった。

◆こんな生き方ができる日本人がいたことが誇らしい。
 中村医師の著書、そのタイトルは「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」。

命賭して 命救う
<2019.12.9 S>