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あぁ 面白き日本映画よ

◆久しぶりに2週続けて日本映画を観た。シニア割で観られること、休みの日にこれといった重要事も少なくなってきたからだ。

2018年の映画興行収入ランキング(6月26日現在)によると、ベスト10に日本映画は「万引き家族」だけ。上位に名探偵コナン、ドラえもんなどアニメ映画、他は洋画が占める。2017年にいたっては、ベスト10に日本映画0。日本映画が盛り返してきた、と言われたが実体はアニメが押し上げただけということ⁈…興行収入面からとはいえ淋しい。
映画は、各々の観る側の気分でも、受けとり方感じ方は少なからず違ってくる。あらゆる観点から冷静に分析する映画評論家には敬服する。しかし「映画好き」の楽しみは、脚本、役者、映像…それでいい、というかその域を出ない。賛否両論、一ファンの視点で書くことをご容赦いただいて。
◆「蚤とり侍」鶴橋康夫監督(78)=興行収入34位。
鶴橋組の魅力が満載だった。「蚤取り」の史実は猫の蚤を取る商売、なぞらえて女性をよろこばせる裏稼業。真面目すぎるエリート侍が、主君の逆鱗にふれ”落ちぶれて”のみ取り侍に。時代を超えて、のみ取り侍・寛之進(阿部寛)を取りまく人間模様、喜怒哀楽が詰め込まれていた。
着物姿だけの登場人物、映像ともにひと味違う艶やかさで何ともカッコいい。にじみ出る、初ののみ取り客となるおみね(寺島しのぶ、寛之進の亡き妻千鶴の二役)は言うに及ばす、のみ取り指南をする江戸No.1プレイボーイ・清兵衛(豊川悦司)には男の色気を初めて感じ、驚いた。
のみ取り侍に、客おみねが一喝「下手くそ!」のシーンもしかりだか、久しい大笑いが何度もできた。
浮気封じに燃える清兵衛の恐妻おちえ(前田敦子)に「君はこういう顔を持っているはずだ。はじけてくれ」と”口説いた”というが、鶴橋監督の人間を見る眼力にも恐れいった。そしていつもこう語っている「日常生活の中の怖さや面白さを、何とか映像で表現したい」。
大半を笑いが占めた。しかし知らぬ間に、何か諦めず頑張れと言われているように感じた。
◆「万引き家族」是枝裕和監督(56)=興行収入7位。
仏カンヌ国際映画祭・最高賞パルムドールを受賞。
役者の妙は言うまでもなく、生活空間などにおいて細部までのこだわり。至るところに日常の淡々とした時間が流れていた。観ていくうちに映像でなく現実と錯覚してしまう…その実は現代の”日本の縮図”をえぐり、深く描いている。

わずかの年金を受ける祖母(樹木希林)、日雇い仕事で働く父(リリー・フランキー)、クリーニング店パートの母(安藤サクラ)、「JK店」でアルバイトする母の妹(松岡茉優)、そして、時に大人たちより冷め万引きをする少年(城桧吏)と実の両親からネグレクトされた女児(佐々木みゆ)―経済大国の首都・東京の片隅で暮らす家族の生活。淡々と客観的”実情”ゆえに、より観る側は考えさせられる。
国際的に高評価されてきた日本映画は多々あるが、「東京物語」(1953年・小津安二郎監督)や「楢山節考」(1983年・今村昌平監督)「HANA-BI」(1998年・北野武監督)、「おくりびと」(2008年・滝田洋二郎監督)…いずれも日本独特の死生観が秘められていた。「万引き家族」ももちろん、生きることへの模索が描き出されているが、それはかつての“日本らしさ”から脱皮した形といえるのかもしれない。
家族のつながりを問い”見て見ぬふり”をもうやめろ、と迫っているかのようだ…日本映画、今後こそが真価を問われる。
わずか2時間の世界。笑って泣いて、人っていい。
<2018.7.2>

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