令和2年 「哀楽」

 人類への警鐘か、コロナ禍に揺れた地球。子年も今日一日。豪雨災害、許せない不祥事・事件、亡くなった方々、そして若者たちの快挙、スポーツの力…喜怒哀楽があった1年。

◆哀◆
【時代の人 突然の訃報】

 志村けんさん70歳が3月、岡江久美子さん63歳が4月に新型コロナウイルス感染で死去。
 岡江さんは女優、タレントとして茶の間の人気者で屈託ない品のある笑顔。乳がん治療中だった。筆者と同世代でもあり、突然の訃報にショックを受けた。
 志村さんはドリフターズの一員、誰しも一度は観ただろう「8時だョ!全員集合」。情報氾濫の現代と違う1969年〜の驚異的視聴率番組だった。志村さんの死が、日本国民のコロナに対する認識のターニングポイントになったのではないか。これからの世を「だいじょうぶだぁ」と言ってほしい。

 プロ野球界も寂しい。
 1月に高木守道さん78歳。中日一筋、バックトスを生み出したいぶし銀のセカンド。ドラゴンズファンの筆者にとっては、中日球場で観戦の子供の頃から憧れの選手だった。
 2月に野村克也さん84歳。阪神、楽天を率いた名監督。だが、大阪球場での南海のユニホーム姿が懐かしい。王、長嶋に比べ自ら月見草と呼んだ。ノムさん!これからの球界にもボヤいてほしかった。

 今が絶頂とも言える俳優、三浦春馬さん30歳が7月、竹内結子さん40歳が9月に自ら命を絶った。驚きと、時とともに重く…だがスクリーンで生き続ける。
 西部警察、浮浪雲の名優・渡哲也さん78歳(8月)。静かな中に凛とした男気、時に飄々と…時代を走り続けた石原軍団は”解散”する。
 映画監督・大林宣彦さん82歳(4月)。時をかける少女、青春デンデケデケデケ…あまたの作品の中、「22歳の別れ」は還暦世代には忘れられない。

 筒美京平さん80歳が10月、中村泰士さん81歳、なかにし礼さん82歳が12月に次々に逝った。手掛けた歌に皆胸を打たれ躍らせた。情景まで浮かんでくる、忘れられない時代の歌だ。背中を押してもらった。

◆楽◆
【勇気の走り 全日本大学駅伝】

 歴史に残る名レースだった。全日本大学駅伝(熱田神宮ー伊勢神宮)は、駒沢大学が青山学院大(4位)東海大(2位)などをおさえ優勝(11月1日)。
 コロナ禍からか、5時間以上テレビにかじりついた。全7区間のうち4区間で新記録、最終区アンカーまでスリリングなレースだった。

 箱根駅伝、出雲駅伝と並ぶ3大駅伝の一つ。今大会は開催自体危ぶまれた。しかし自治体も含め関係者は、無理だと思う前にどういうことならできるのか、と制限下に前に進めた。沿道に大声援はなかったが、タスキを繋ぐ選手に例年と違う感動があった。
 アンカーでデッドヒートを制した駒沢大の田沢選手は、インタビューで「まず、この大会を開いて下さった方々にお礼…」と、感謝を口にした。

 重く先の見えないコロナ禍。無観客試合、または観客を大幅に減らしてのプロ野球、大相撲。目だけでなく、音の迫力など新鮮な発見があり、スポーツの一つの指針となった1年。何より熱く、観戦の楽しさを改めて感じた…スポーツの力!

<2020大晦日  S>
*人を出来事を見つめ報道コラム「喜怒哀楽」は137回目。コロナ禍に揺れた令和2年、来年の漢字は「幸」といきたいものです…この1年に感謝し、引き続きよろしくお願いいたします。S

令和2年 「喜怒」

 人類への警鐘か、コロナ禍に揺れた地球。子年が終わる。豪雨災害、許せない不祥事・事件、亡くなった方々、そして若者たちの快挙、スポーツの力…喜怒哀楽があった1年。

◆喜◆
【藤井聡太2冠「盤上の不変」】

 将棋の高校生棋士、藤井聡太七段(17)が7月、「第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」(産経新聞社主催)を制し棋聖位を獲得。8月には「第61期王位戦七番勝負」(新聞3社連合主催)でもタイトル奪取。18歳1カ月での2冠と八段昇段は最年少記録。
 奈良・興福寺旧境内で11 世紀中頃の日本最古の駒が見つかっていて、平安時代から”将棋”は指されていた⁈
 日本人男性で一度も将棋を指したことのない人は少ないのでは…81マスを動く王将、飛車、金将、桂馬、歩兵などそれぞれの好守。盤上は美しく、さながら戦国時代の陣も思い起こさせる。
 今の将棋界もAI(人工知能)時代と言われる。藤井2冠は棋聖位獲得時に「AIは対決を超えた共存の時代。今の時代でも盤上の価値は不変、そういう価値を伝えていけたらと思う」。17歳にして深い言。
 残念ながら、日本で独自の成長を遂げてきた将棋人口は漸減が続く。国際的にほぼルールが統一されてきた囲碁に比べ、駒が漢字で書かれていることなども国外普及の妨げとも言われるが…だからこそ日本の心が投影され、魅力的勝負が展開される。それがまたいいじゃないか。

◆怒◆
【「めぐみ会いたい」横田滋さん死去】

 拉致被害者家族会の初代代表、横田滋さんが6月に亡くなった。87歳。
 1977年(昭和52年)に北朝鮮に拉致された横田めぐみさん(55)=拉致当時(13)=の父で、妻の早紀江さん(84)と全国で講演し被害者奪還を訴え続けた救出運動の象徴的存在。半生かけた「めぐみに会いたい」…かなわず、悔しく腹立たしい。
 1980年(昭和55年)、産経新聞・阿部雅美記者がスクープした拉致被害者報道。国内ではしばらく取り上げられる事もなく、小泉政権時代、2002年(平成14年)ようやく帰国した蓮池薫さん(62)らは、筆者と同年代だ。
 拉致は紛れもなく国家犯罪だ。
 遅い、遅すぎる。拉致問題に力を入れてきた安倍自民党政権でさえ…被害者の奪還、遅々として進まない国家間の現代の壁。結果こそ、政治力とは何なんだ!
 父滋さん、母早紀江さん、娘めぐみさんらが家族を思い祖国を思い続けて42年。魂の訴え、その思いに寄り添えない現実…滋さんは父として無念だろうが、娘を取り戻す事、拉致被害者を救い出す事に尽くし切った見事な生涯だった。

 信念と絆の大切さ。そして諦めず、また前を見る…人には必ず、その力があるはずだ。
<2020.12.28  S>

*報道コラム「ニュース喜怒哀楽」を振り返ります。今週の続き「令和2年 哀楽」は大晦日に伝えます。S

漢字 「密」に勝る「笑」

 年末の一つの風物詩、世相を漢字一字で表す「今年の漢字」が、京都・清水寺で「密」と発表された(14日)。新型コロナウイルスに苦しんだ1年、「3密」に揺れた国民の心が反映されたといえる。
 日本漢字能力検定協会が毎年公募し26回目。2位に「禍」、3位は「病」が続いた。4位「新」、5位「変」、6位「家」、7位「滅」、8位「菌」、9位「鬼」、10位「疫」。
 揮毫した森清範貫主(かんす)は「密は心のつながりも表す。コロナ禍で国民や医療従事者が苦労している中、いい年になるよう祈念して書きました」。

◆政界も揺れた1年。
 「今年の漢字は『働』という字です」…安倍晋三前首相の辞任で8月に誕生した菅義偉首相。「国民のために働く内閣、こう銘打っている」と説明した。
 11月の都構想再挑戦も否決。吉村洋文大阪府知事は「2つ、頭の中にある」と「病」「疫」を挙げた。「どちらかということなら、疫ではないか。あまり前向きな漢字でないので選びたくないが、率直に振り返ったらそう」。

 すべての人に、それぞれ”今年の漢字”がある。そして踏ん張ってきた。

◆ 興味深いのが、小学生が選ぶ「今年の漢字」。トップ3は「笑」「幸」「新」だという。ベネッセホールディングスが小学3年生~6年生7,661人の調査結果を発表した。

 1位の「笑」は284票で「コロナでも笑顔で頑張れた」「家族や友達といっぱい笑った」などが理由に。2位は「幸」250票、「学校に行ける幸せ感じた」「家族と過ごす時間が幸せ」。3位は「新」178票で「コロナで新しい生活」「新しい世界や楽しみを味わった」などだった。4位「嬉」、5位「悲」、6位「友」、7位「苦」、8位「恋」、9位「心」、10位「鬼」。
 新型コロナウイルス禍で生活変化の連続にかかわらず、トップ3すべてポジティブで前向きな漢字に驚いた…変化を新しい経験として、楽しみや幸せを見つける。家族や友達と充実した日々を送っていた事がうかがえる。

 また憧れる人の調査で1位に「鬼滅の刃」の主人公「竈門炭治郎」(618票)、2位に「お母さん」(393票)が選ばれた。共通点は「優しい」「家族のため頑張っている」だという。 

 参った!やるなぁ!子供たち。ポジティブ漢字、憧れるお母さん…嬉しいじゃないか!大人たちも、見習いたい。

苦の中こそ 前向き心
<2020.12.23 S>
*コロナ禍に揺れた令和2年もあとわずか。報道コラム「喜怒哀楽」は、変わらずに人を出来事を見つめていきます。S

「天外者」 志を継いだ


先の見えないコロナ禍、鬼滅の刃が記録的興行収入を上げる中、久しぶりに映画を観た。「天外者(てんがらもん)」。市民有志が立ち上げた「五代友厚プロジェクト」が7年かけて悲願の映画化、脚本・小松江里子×監督・田中光敏。12月11日全国ロードショー。

◆「週末ワイド ラジオ産経」の番組コーナー「サンスポよもやま話」で、田中光敏監督(62)の興味深い話が聞けた。ベテラン笹井弘順記者との”対談”。
田中監督は、五代友厚についてまず「武士を捨てて民に下る。切腹ものの当時、既成概念をものともせずぶっ壊していく気迫、凄さ」と、静かに語った。

◆五代役に今は亡き三浦春馬、大きく絡む坂本龍馬役に三浦翔平、岩崎弥太郎役に西川貴教…オリジナルストーリーの中に、それぞれが織りなす志と姿が熱い。
台詞、シーンもまたいい。
贈られたかんざしを手に女郎はる(森川葵)「何一つ自由になってないけど、貴方といるとこんな私でも生きていける。夢を見れそうな気がする」。
五代(三浦)「夢を見たらいい。そんな世に俺がしてやる」。
妻豊子(蓮佛美沙子)「ほんまにあなたは天外者や」。大阪の町にはるかに続く提灯…泣けた。


◆田中監督は、三浦春馬のことを、温かく寂しそうに語った。
「きれいな大人になった。受けてもらってよかった。見た目も美しいが心も美しい、ほんといい奴」。
「(死去の報に)震えた、今も立ち直れない。無念、彼に完成を観せられなかった…一番悔しいのは彼」。
「他界したんですが、スクリーンの中で最高の仲間と最高の芝居をしてくれている」。

◆「誰もが夢みるこができる国を創るために…」身もいらぬ、名もいらぬ、ただ未来へと、五代友厚がめざした新しい時代。
コロナ禍で依然先の見えない、新しい生活が求められる令和時代。まさに当てはまる。
田中監督は変わらぬものを見つめ、変わる…その志を伝えつなぎたかった⁈

できるならば、50歳、60歳の三浦春馬が観たかった。

志 未来に生きて
<2020.12.7 S>

*厳しいコロナ禍の年もあと1ヵ月を切りました。変わらずに人を出来事を見つめ、喜怒哀楽を伝えていきたいと思います(原則月曜・不定期)。