力くれた 3つの”戦い”


◆夢競馬 アーモンド有終V

 史上初めて3冠馬3頭が集結した世紀の一戦、第40回ジャパンC(G1・東京競馬場・芝2400メートル=良)は、クリストフ・ルメール騎手騎乗の1番人気アーモンドアイ(牝5歳・国枝栄厩舎)がラストランを飾った。G1 9勝目。2着に2番人気のコントレイル(福永祐一騎手)、3着は3番人気のデアリングタクト(松山弘平騎手)。穴党には面白くないが、まさに競馬ロマンの結果となった。
 優勝賞金3億円。これで総獲得賞金が19億円1202万9900円となり、歴代1位のキタサンブラック(18億7684万3000円)を抜きトップになった。コロナ禍にかかわらず、インターネット投票がほぼ7割を占める売り上げは前年比47.5%増の272億7433万4600円、2000年以降で最高額を記録した。

 競馬は血の戦いとも言われる。シンボリルドルフ、トウカイテーオー、ディープインパクト、オルフェーブル…牝馬アーモンドアイも記録とともに、記憶にも残る名馬となった。今年の年度代表馬はアーモンドアイで決まりだろう。しかし完調でないと言われた無敗の牡馬3冠コントレイルは外から一気に最速の足を繰り出し、無敗の牝馬3冠デアリングタクトもハナ差3着争いを死守する根性を見せた。3冠を獲って年度代表馬に選ばれないだろうこの2頭が、やや気の毒でもある。

 ルメール騎手「アーモンドアイのストーリーは終わっていない。いい子供をつくってくれたら乗りたい。ちょっと寂しくなるけど、感謝したいです」…その子たちよ!凱旋門賞を獲れ。


◆タイソン 54歳の”復活”

 元ボクシング世界ヘビー級王者で54歳のマイク・タイソンが、米ロサンゼルスで世界4階級制覇した51歳のロイ・ジョーンズとエキシビションマッチを行い、かつての勇者を彷彿させた。
 1ラウンド2分の8ラウンドマッチ。結果はドロー(引き分け)だったが、2005年の試合を最後に”引退”していたタイソンは強烈で重いパンチと手数で圧倒。45キロを減量した肉体、年齢を感じさせない俊敏な動きを見せた。

 タイソンと言えば、現役時は荒々しい動物的ボクシング、時に相手の耳に噛みついたことさえあった。そんなタイソンも開口一番「相手にKOされなかったのでよかった」と謙虚なコメント。そして「8ラウンドも彼とあの場に立てて幸せだった。だからスコアカードも無観客も、私にとって意味のないものだった」と満足気に淡々と話した…リングの雄姿!歳は関係ない。


◆日大帰ってきた大舞台

 アメリカンフットボールの関東大学1部「TOP8」の優勝決定戦が行われた。2018年春に悪質タックル問題を起こしTOP8に3季ぶりに復帰した日大が、今季初昇格の桜美林大を38―14で破って優勝。3年ぶりの東西大学王座決定戦・甲子園ボウル(12月13日)に出場し、因縁の関西代表・関西学院大と対戦する。

 3タッチダウンを決めた川上理宇選手「回り道をしたが、あの事件があったことで以前のようにコーチが作るチームではなく、自分たちが作るチームとしてひとまわり強くなれた」。
 悪質タックル問題後に、指揮をとってきた橋詰功監督は「タックルの問題に加え、新型コロナウイルスもあったが逆境を打開する力が選手についた…チームが生まれ変わったかどうかはまだわからないが、スタートラインには立てたと思う。ここから新たな準備をして戦っていきたい」と静かに語った…挫折立ち上がる!胸を張れ。

 ここまで来るのに、それぞれの汗と涙、関わった人たちの思いがあった…こんな時だから、スポーツに力をもらう。
<2020.11.30 S>

*厳しいコロナ禍の1年もあと1ヵ月。変わらず人を出来事を見つめ、喜怒哀楽を伝えていきたいと思います(原則月曜・不定期)。

球児の直球 甲子園映え

 プロ野球阪神の藤川球児投手(40)が、甲子園球場で最後のマウンドに上がった(10日)。巨人との引退試合の九回に登板し全直球勝負。22年間の現役を終えた。

◆「ホップする」「直球と分かっていても打てない」「バットがボールの下で空を切る」。数々の強打者たちに言わしめた剛速球。米大リーグ時代と合わせて日米通算245セーブ、あと5つで大台250セーブだった。
 1999年にドラフト1位で阪神に入団し「松坂世代」の一人。2005年リーグ優勝に貢献、07、11年に最多セーブのタイトル獲得。13年から米大リーグ・カブスなどでプレーした後、「子どもたちに夢を」と独立リーグの四国アイランドリーグplus高知に…故郷の地に戻り勇姿を見せたのは、感謝の思いがあったのだろうか。そして16年から再び縦ジマのユニフォームを着た。

 野球はチームプレーだ。とともにプロは、個人技の集合体でもある。全身全霊の跳ねるような投球は個性あふれ、強打者との真剣勝負は見る者をワクワクさせ、プロの魅力十分だった。

◆新型コロナ禍に、盛大な阪神球団セレモニーとなった。リンドバーグ渡瀬マキさんがサプライズ登場、家族からの花束、対戦選手からのビデオメッセージ…不祥事で、表舞台に出ていない清原和博元選手の声も。そして締めは、バッテリーを組んできた矢野監督(51)へ投げ込む”最後の一球”になった。2010年9月30日、矢野捕手(現監督)の引退試合。最終回2死から登場予定だった矢野捕手。しかし藤川投手が逆転3ランを浴び、引退試合なのに矢野捕手出場なし…やっと”10年越しのバッテリー”となった。

 特別な選手を裏付けた演出。それだけにふと思ってしまった、今季で縦ジマのユニフォームを脱ぐ能見投手(41)や福留選手(43)らを。引退ではないとは言え、阪神に残り先々の指導者をにらんだ道もなかったか? 今の阪神ベンチは中日OBや⁉とも囁かれたり…あまりに冷たくないか球団よ。

◆最後のマウンド上。藤川投手に涙はなく、終始さわやかな笑顔で語った。
「僕のストレートには甲子園の大応援団のみなさん、全国のタイガースファンの熱い思いが詰まっています。それが火の玉ストレート。打たれるはずがありません!」。
 何か気恥ずかしくなるような、今の時代ダサいと言われそうな言葉。だが、一筋に来たからその”直球言葉”がよく似合っていた…「幸せな時間でした」。

真っ直ぐ 次の舞台 
<2020.11.16 S>

バイデン氏”勝利” 揺れる米

 米大統領選投開票から4日、ようやく民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)が勝利宣言した。国民に向けた演説で「確信できる勝利だ。国民は7400万以上の票をもって当選させてくれた」「選挙戦は終わった」。
 国際社会の”信任”の証、海外首脳から祝意。菅義偉首相も「心よりお祝い申し上げる。日米同盟をさらに強固なものにするために共に…」とツイッターで表明した(8日)。
 
◆トランプ大統領は、アメリカファーストを掲げて雇用を促進し経済を押し上げた功績と裏腹に、「分断」という闇も拡大させた。新型コロナウイルスに疲弊したアメリカ国民・国家、黒人暴行死もあり、一種癒やしを求める気持ちが勝ったということか。
 トランプ大統領は敗北を認めず、民主党の投票不正を訴え法廷闘争の構えを崩していない。来年1月20日の第46代米大統領就任式までに、衝突や暴徒化が起きないことを望む。

◆勝利を確実にしたバイデン氏の好物はアイスクリーム。政治家として特徴のなさに、揶揄されるあだ名でもある。米の大メディアは公正というより政治参加者、民主党派であり反トランプ…偏った報道、情報操作が皆無だったとも言えない。
 国民は、よく言えば長老政治家ゆえのバランス感覚のバイデン氏に”普通”を求めた⁈ ただ世界のトップを走り続け、かつ人種のるつぼのアメリカ。バランスだけではまとめられない”腕力”も求められる。
 
 77歳と74歳の戦いはひとまずの決着はついたが、両陣営の副大統領候補・ハリス氏(56)、ペンス氏(61)が、今後はUSA大統領候補に相応しい年齢ではないか。

◆次期大統領には、再び増え出したコロナ対策、国内融和、対中外交…強い国の宿命アメリカ、内外に課題は山積している。

 バイデン氏は「アメリカは一つ」「分断ではなく統合を追い求める大統領になることを誓う」と語った。アメリカの分断は世界にとって危険で不幸だ。これで終わりでなく、さらに一層分断の4年になることを危惧する声もある。真の民主主義と自由の国へ。

世界牽引 アメリカの先
<2020.11.9 S>

未来の大阪 再び否決


 大阪市を廃止し4つの特別区(淀川・北・中央・天王寺)に再編する「都構想」の住民投票は、11月1日実施され否決された。賛成675829票(49.37%)・反対692996票(50.63%)で、2015年(平成27年)以来2度目の今回も僅差。投票率は 62.35%、前回を下回った。

◆賛成派の中心、大阪維新の会代表・松井一郎大阪市長は記者会見で「任期終了後に政界家としては終了(引退)する。だが改革はつないでほしい…」。代表代行・吉村洋文大阪府知事は「任期を全うする。しかし、僕自身が挑戦することはありません…」と、政治家としてのケジメを語った。

 選挙で最も重要で強い民意は、都構想反対を示した。”なり振り構わず”公明党も巻き込んでの敗北。だが、今のままでは…と改革の灯をつけ、何よりも政治を市民の身近にまで持ってきた維新の会は評価されるべきだ。
 
◆新聞やテレビは、選挙のとき出口調査を行う。賛成派の中心・維新の政治運営を評価している人のうち、都構想には3割もの人が反対という調査もあった。10代〜40代は賛成が多数、60代以上は反対多数。また無党派層の6割が反対した。

 維新人気は根強かったが、説明不足で市民理解に届かなかった、地名の馴染みや歴史の重み…そして多くの市民が苦しい時の選挙戦、コロナ禍が多様に影響したことも否めない。
 
◆ 素晴らしい日本、大阪。「少子高齢時代」が確実に進む将来。行政改革、働き方改革、器に応じた自治体が求められる。変えてはあかんもの、変わらなあかんもの…先を見つめていく、特に若い世代こそ。
 
 ひとまずはノーサイドだが、市民の声は賛成・反対二分された。これで終わりではない。賛成派も反対派も、形はどうあれ未来の大阪へどうするか、これからも一層政治の力が問われる。そして市民も。

新たな時代 見つめて
<2020.11.2 S>
*報道コラム「喜怒哀楽」は、人を出来事を変わらず見つめていきます(原則毎週月曜・不定期)。