淡路島本社 パソナの挑戦

 兵庫県立淡路島公園に、全長約120mの実物大「ゴジラ」が登場した… そのテーマパーク「ニジゲンノモリ」を運営する親会社・人材派遣大手のパソナグループが、本社機能を淡路島に移転すると発表した。令和5年度末までに社員約1200人を東京本社などから異動・移住させ、経営会議も開催するなど本社化する方針。淡路島では10月1日、来春入社予定の約120が出席し内定式も行われた。
 創業者の南部靖之代表(68)は「コロナが決定づけた」と話した。

◆新型コロナウイルス拡大の中、多くの企業が遠隔で仕事をするリモートワークや、通勤ラッシュを避けた「働き方改革」を余儀なくされた。
 すでに淡路島で執務するパソナの南部代表は神戸市出身、東京一極集中の現状に疑念を抱いてきたという。「会社に行かなくても仕事ができる」改革を軸に社内議論を進め、物価や高い賃料の東京から地方へ本社機能を移しても支障ない、と決断した。

◆ パソナは「道の駅」など地方創生に力を入れ、2008年から就農支援、17年に「ニジゲンノモリ」、今年は劇場・レストラン「青海波」を開業した。各施設が連なり利用率を高め、就業者数アップの相乗効果も視野にある。本社を地方・山口市に置くファーストリテイリングなどはあるが、東京本社を逆に地方移転する企業は異例。
 地方が拠点だと情報収集や人材確保など不利と言われ、日本全体の人口減が続いても東京中心に首都圏人口は増え続けている。逆に地方はどんどん寂しく高齢化が進むという流れ…上場企業約3600社の5割が狭い東京に本社を置いているように、”仕事の数”の格差も改善されない。
 企業の地方移転に対し、政府が2015年に導入した法人税優遇もわずか100件余りにとどまり、目標の50分の1にも満たない。

◆いずれ起きるといわれる首都直下地震などの大災害リスクが言われて久しい。
 衣食住も含め、地方の暮らしに魅力を感じる人も増えて来ている。自治体の移住支援もようやく多様になりつつあり、47都道府県にさらなる”地方拠点”がほしい。何も企業だけでなく大農営場でもいい。
 リモートワークという点が最重要でなく、何より地方に働く場を増やす政策だ…コロナ禍で分かった今こそ、国・企業が一体となり全力で進めるべきだ。

◆製造業でなく人材派遣業のパソナに「雇用創出は未知数」や「早い撤退」を懸念する声もある。今こそ政府、自治体の支援は欠かせず、歴史的に重要な時だ。
 最大の課題、少子高齢化に有効策を打ち出せていない日本。一極集中はもういい、地方創生こそが最大の打開策だ…パソナの挑戦が”呼び水”になることを願う。

目覚めよ! 地方の力 
<2020.10.26 S>

揺れた阪神  原点戻れ

 阪神タイガースのゴタゴタは収まったのか…何かスッキリしない。
 揚塩健治・阪神球団社長(60)が、唐突に辞任発表した(9日)。3月、9月と2度も選手らの新型コロナウイルス感染者を出したことへの引責だが、シーズン途中の球団トップの辞任は異例。「球界全体にご迷惑をかけ…1日も早い混乱を収拾…私なりのケジメ」と会見で語った。

◆阪神は3月、球界で初めて藤浪ら新型コロナウイルスの感染者を出した。会食は「4人以内」「個室」「2時間以内」などの内規を定めたにもかかわらず、9月にまた同じ過ちを繰り返した。名古屋遠征時、福留、糸原らが内規を破る8人で会食、その後大量の感染者と濃厚接触者が出た。10選手とチームスタッフに制裁金を科した。

 選手も人、生活している限りは感染の可能性はある、ましてや若い…などと理解を示す声もないではない。感染したことでなく、プロである自覚と危機意識を欠き、内規・規則を破ったことが問題なのだ。球団管理体制もどうなっている!と言われても仕方ない。

◆ 巨人に大差をつけられ優勝の可能性が消えたとはいえ、阪神は戦績だけ見ればAクラスに踏ん張り、まだ順位も確定していないこの時期。ケジメは当然だが後任も決まっていない状況での発表、なぜ?
 かつてタイガースの親会社・阪神電鉄が買収を仕掛けられ、”ホワイトナイト”として手を差し伸べた阪急HD。2006年に経営統合した当初「球団経営は阪神が行う」と、阪神タイガースは“聖域”のように見えた。しかし年月とともに、親会社・阪急阪神HDは徐々に”阪急化“が進められてきた…2度目の感染を聞き、角和夫代表取締役会長兼グループCEOが激怒したとも伝えられた。そういった企業内力学・論理も透けて見えてくる。

◆揚塩球団社長が甲子園球場で、矢野監督に今季限りの辞任を伝えた際「フィールド外のことは監督の責任ではない」と、球団フロントが全責任を負う考えを示したという。フロントが責任を取れば終わる話ではない。
 矢野燿大監督(51)の続投も発表されたが、直後に矢野監督も内規を上回る人数で会食していた事も明るみに…何とも”.後味”悪く混迷状態。フロント、個々の選手の意識も含め、球団改革の時かもしれない。
 子どもたちに夢を与える、ファンあっての阪神タイガース。甲子園の「縦じま」はヒーローなんだから。

プロ野球 エリ質して
<2020.10.22 S>

歌い継がれる ”時代曲”

 作曲家、筒美京平さんが亡くなった(7日)。80歳。
 歌は世につれ世は歌につれ…レコード時代の昭和青春を振り返れば、そこにはいつも筒美京平さんの曲があった。

◆周りからあちこちで「えっ、これも筒美京平が作った歌!?」の声が聞こえてきた。
 ブルー・ライト・ヨコハマ(1968年、いしだあゆみ)、17才(1971年、南沙織)、また逢う日まで(1971年、尾崎紀世彦) 、わたしの彼は左きき(1973年、麻丘めぐみ)、木綿のハンカチーフ(1975年、太田裕美)、スニーカーぶる〜す(1980年、近藤真彦)、魅せられて(1979年、ジュディ・オング)…日本レコード大賞など当時の歌謡賞を総なめにした。
 レコード・CDの総売上枚数は7600万枚を超える。ちなみに2位が小室哲哉、3位に織田哲郎、4位は桑田佳祐、5位つんく♂。

◆多くの楽曲でタッグを組んだ作詞家、松本隆さん(71)がツイッターに追悼コメントを連投した。
 「作詞家になった瞬間、目の前に筒美京平は立っていて、兄と弟、ピッチャーとキャッチャー…」
 「京平さんからもらったものはありったけの愛、彼ほどぼくの言葉を愛してくれた人はいない…」
 「少しの間待ってて。そうしたら笑顔で、喜んだり怒られたり哀しんだり楽しく語り合おうね…」

◆人それぞれの時代を刻む歌。その時の情景が甦り、背中を押してもらったり、時には一緒に涙したり…それぞれにとっての忘れ得ぬ”名曲”。だが、筒美さんは「僕は名曲じゃなく、ヒット曲をつくりたい」と語っていたという。
 プロの”職人”として裏方に徹し、インタビューやテレビ出演も少なく、表舞台には最後まで出なかった。ベールに包まれた私生活だった。庶民の心を大切にした、作曲家だったのではないか。だからこそ、胸に迫る「時代の曲」を残してくれたのだろう。

昭和は遠く 魂の歌
<2020.10.19 S>

*報道コラム「喜怒哀楽」、変わらずに人を出来事を見つめていきます。いぜん先の読めないコロナ禍ですが、どこかに希望が…踏ん張っていきましょう。S

未来の大阪 都構想告示

大阪市を廃止し、4つの特別区(淀川・北・中央・天王寺)に再編する都構想の住民投票が12日告示された。2015年(平成27年)以来2度目。11月1日に投開票され賛成が反対を上回れば、2025年(令和7年)元日に特別区設置となる。

◆ 新型コロナウイルス禍。何もこの時期にとの声もあったが、推進、反対両派は街頭でのアピール活動を本格化。
推進の中心、松井一郎大阪市長(大阪維新の会代表)、吉村洋文大阪府知事(維新代表代行)は繁華街・難波で第一声「成長を生み出し、二重行政には戻さない」。反対派は「何もできない、半人前の自治体になる」と訴えた。

大阪市が”大阪都”になれば4特別区に再編、区長や区議は選挙で選ばれる。インフラ整備などの広域行政は大阪府に一元化、特別区は教育・福祉など身近なサービスを担うことになる。推進派は府市の「二重行政」を解消できると強調。反対派は政令市のメリットが奪われ「住民サービスが低下する」と主張している。だが、どちらの主張もまだまだ大枠論で具体的に伝わっているか、市民にどれだけ伝わったか疑問だ。そして推進、反対の”根本”は何なのか、依然浸透しているとは言えない。

◆ 国内で行われる住民投票としては過去最大規模で、有権者は日本国籍を持つ大阪市民約224万人(9月現在)。前回住民投票は約1万票の僅差で否決された。投票率は66.83%の異例の高さ、反対が33.53%(得票率は50.38%) 、賛成:は33.02%(得票率49.62%)。当時の維新代表・橋下徹市長は政界引退した。

投票率に関係なく成立するが、今回も高い投票率になるだろう。注目の一つは新たに有権者となった18、19歳約4万票の行方。各政党も早くから若年層へのアピールに積極的だ。推進派の大阪維新の会などはSNSを使い解説漫画や寸劇動画、オンライン会議も発信。反対派の自民党などは、若い世代ら啓発運動やQ&Aを展開している。

◆新型コロナウイルス下、市民説明会の回数は前回から大きく減った。熱気にもやや欠ける?スタートとなっが…好き嫌いや雰囲気でなく、次の世代へつなぐこと。
重い判断を委ねられる大阪市民。だからこそ、政治は一層丁寧な説明責任を果たし、市民もしっかり理解を深めるべきだ。そして賛成でも反対でも…1人でも多く将来を見つめ、納得して1票を投じてほしい。

市民が決める 大阪の姿
<2020.10.12 S>

強い米 トランプ大統領感染 

  
 トランプ米大統領(74)が新型コロナウイルスに感染し入院、3日後には退院し執務に復帰した(5日)。一時重症化を防ぐため未承認薬の特例使用を認めたとの報道もあり、完治でなく治療は継続する。
 公の場でもマスクをせず、経済最優先政策を打ち出してきたトランプ大統領。世界が注視、影響を及ぼす大統領選挙(11 月3日)目前、トランプ陣営に痛手であることに違いはないが…。

◆それにしても最高裁判事の指名式典が行われたホワイトハウスで、集団感染(クラスター)が発生といわれている…日本なら官邸で起こったような事態⁈ 何という国・アメリカ。
 
 2003年だったと思うがワシントンポスト、NYタイムズ(ニューヨーク)を視察した。まず驚いたのは、至る所に大小の国旗・星条旗が掲げられていること。人種のるつぼの国、団結するための象徴と思った。そして中枢同時多発テロで乗っ取り機が突っ込んだ、NYのWTCビル跡地。そこには犠牲になった人たちの写真が飾られ、タイトル文字は「Heroes(ヒーローたち)」だった。どこでももパワフルな”異人種”、自由で強い国を感じた。

◆直近の支持率は、政治専門サイトによるとトランプ大統領43.1%、バイデン前副大統領(77)50.1%。「適切なコロナ対策」についてもバイデン氏が大きくリード(NBCなど)。ただ、勝敗を左右する「激戦6州」の平均支持率はバイデン氏48.6%、トランプ氏45.1%と僅差だ。またコロナ禍だけでなく、貿易戦争の”敵”中国への強硬姿勢を見せ続けるトランプ氏へのコアな支持も依然根強い。

 不屈のヒーローを好むアメリカ。「コロナに勝った」姿を前面に押し出し「トランプ一気の逆転」がないではない。日本の総選挙の”弔い合戦”に似た節も。
 
◆強いアメリカファーストを掲げ、支持を重ねてきたトランプ大統領。それでも時折り自分ファーストの「実業家トランプ」に見える。全世界を見る「政治家トランプ」こそ求められるが…危機に強い大統領とアメリカを米国民は求めている。だがそれだけでいいのか。自由な国ゆえの苦悩もまた、今のアメリカの現実だ。

自由の女神 どちらに
<2020.10.6 S>

「至誠一貫」 飾らない新大関

 大相撲九月場所で関脇正代(28歳)が熊本県出身初の優勝を果たし、大関昇進を決めた(9月30日)。東京都の時津風部屋で伝達式が開かれ、「大関の名に恥じぬよう、至誠一貫(しせいいっかん)の精神で相撲道に邁進してまいります」と口上を述べた。
記者会見では「これからこういうふうに行きたいという気持ち。相撲道に対して誠実で最後まで貫き通すというのを込めた」と淡々と答えた。

  ◆貴ノ花「不撓不屈(ふとうふくつ)…」(平成5年初場所後)、若ノ花「一意専心…」(5年名古屋場所後)、琴奨菊「万理一空…」(23年秋場所後)に比べ、平凡でかつ古い言葉なのに、なぜか新鮮に心に響く…至誠は、孟子の「至誠にして動かざるものは、いまだこれあらざるなり」。

◆漫画やゲーム好き、ユーチューブで気分転換する今どきの青年の素顔も。かつて十両昇進会見で「できればみんな当たりたくない」と語り“ネガティブ力士”とまで呼ばれた。しかし、東農大相撲部でマネジャーとして支えた片山大誠さんは、親友正代をこう見る。「土俵に上がると別人になる。自分の相撲が気に入らなかったら1時間でも土俵の中にいた。負けず嫌いでとにかく真面目だった」。
 真面目がダサいなどという声も聞こえたりする昨今。また誠実、実直な男という言い方も聞くことが少なくなったような気がする。辞書には真面目=本気・真心を込めること・真剣な態度、とある。どこがダサい!? カッコいいじゃないか!
 
 4年前の熊本地震では慰問に向かい、熊本城をあしらった化粧まわしを着ける。この郷土愛に「勝つことで勇気づけられる」と地元の声。故郷の期待も背に、飾らない新大関正代は十一月場所・国技館の土俵に上る。

◆人は時に容赦なく、厳しい言葉を浴びせてしまう。家族でも友人でも職場でも、致し方ない時もあるだろう。だが、根本には「至誠」をもって…日本人ならではの言葉。経済や結果優先の今だからこそ一層大切に、忘れないでいたい。

誠は最強 いつの世も 
<2020.10.5 S>