見えない敵 人類の闘い

 桜は満開間近だが、週末の大阪は道頓堀や御堂筋も閑散としていた。いや東京など日本列島のすべての繁華街は、人が激減した。 
 日々新型コロナウィルス感染者が増加する中、外出・移動自粛要請が発令されたからだ。それでも東京では一日で60人以上の感染者が続いた。 

◆地球上で生命体の”トップ”に立つ人類。脅かす訳ではないが、地球誕生40億年の間に生命体の絶滅危機が数回あった。火山の大爆発、隕石の衝突…そしてウィルス感染症の蔓延。

 中国武漢市に端を発した新型ウィルス感染者は、世界中であっという間に65万人を超え(回復者数は約13万人)、死者は3万人以上に上った(3月29日)。数字上致死率は5%未満だが、感染者は一気に早く重篤になる危険がある。
 ヨーロッパで爆発的感染拡大が起きイタリア、スペインでは深刻だ。特にイタリアでは死者1万人を超えた。アメリカの感染者は、ついに10万人を超え世界最多となった。
 個人主義的な欧米、握手やハグ(抱擁)などスキンシップの生活習慣も影響しているとも言えよう。

◆経済活動も大きな停滞、何兆円の損失と報道される。新日鉄やソニーなどは数万人の社員が原則在宅勤務となっている。しかし中小の企業は存続のため、そうもいくまい。
 成長一辺倒で来た企業論理への警鐘ではないか…一方で働き方改革、ひいては東京一極集中の是正、地方創生の好機ではないか。

 医療体制も急務だ…何のための経済成長、技術進歩なのかも突き付けられている。世界の技術を結集して一刻も早いワクチン開発が求められるが、時間がかかる。流通する薬品での”代用”も急がなくてはならない。

◆日本の感染者数は2500人以上となった。そんななか今日、志村けんさん(70)急死というニュース、列島に衝撃が走った。
 2020年東京五輪は1年程度の延期、”春の風物詩”大相撲は無観客大阪場所になり、国民的スポーツの選抜高校野球中止。プロ野球もいつ開幕できるか分からない。
 
 日本は中国、欧米に比べると”封じ込め”が続いていると言えるが、いつオーバーシュート(爆発的患者急増)してもおかしくない。都市封鎖(ロックダウン)さえも正念場だ。安倍晋三首相は「長期戦を覚悟していかなければならない」と会見で訴えた。政治の信頼、そして国民全体の意識と行動…今耐える。

人類 負けられない
<2020.3.30 S>

日本の心 桜よ

 暖冬列島で桜が咲き急ぐ。開花宣言一番乗りは東京(14日)、観測史上最速となった。
 桜は日本人にとっては特別な花だ。新型コロナウィルス感染拡大で、人が集まる会は自粛の時…残念で寂しい。

◆観光国としての側面を持つ日本、インバウンド(訪日外国人旅行)はシートや茣蓙での花見は少ない。日本人は昔から車座になり飲食歓談、そして神が宿る桜木に豊作を願った。人と人のふれあい、風情を愉しむ…新型コロナウィルス禍で、大阪造幣局の通り抜けは早々と中止、東京・新宿御苑もシートなど敷いての花見は禁止となった。
 ならばせめて、地元の近くの桜を改めて眺めてみるのはどうだろう?名所に劣らない良さを再発見できるかもしれない…フラッと楽しんでほしい。

◆桜の名所1位は東京・目黒川だという。そんなバカな⁈ 確かに目黒川沿いを歩く人の数は日本中で最も多い。しかし名所を”人数で決められたら”合点がいかない。美を眺めて、歴史に思いを寄せ、それぞれの時…桜には日本の心がある。

 個人として敢えて挙げるなら、東日本大震災が起きた東京単身赴任時代に観た六義園のしだれ桜、千鳥ケ淵の夜桜。そしてもう一つは故郷・十四川(三重・四日市)の桜だ。高校生の青春時代、母校の傍を流れる川の堤防桜にそれほど印象や思いもなかった。昨年、四十数年ぶりに観た…郷愁の桜、胸に迫るものがあった。

 ほんの七十数年前。国を家族を愛する人を守るため、靖国神社の桜の下で会おうと散った若い命もあった。

◆パッと咲いてパッと散る。
「しばらくは 花の上なる 月夜かな」(松尾芭蕉)
「見ぬものを 見るより嬉し さくら花」(加賀千代女)
「散る桜 残る桜も 散る桜」(良寛禅師)
 こんな時だからこそ、桜を愛でたい。

潔さ儚さ 日本っていい。
<2020.3.16 S>

”2人の涙” いざ!東京五輪 

【ニッポン柔道 ”武士の情”】
 全日本柔道連盟(全柔連)は講道館で強化委員会を開き、2016年リオデジャネイロ五輪金の大野将平(男子73キロ級)や、2019年東京世界選手権優勝の阿部詩(女子52キロ級)ら男女計12選手を東京五輪代表に選出した(2月27日)。国際大会の実績など踏まえ、出席者の3分の2以上が、後続に大きな差をつけていると判断して決まった。
 個人の全14代表のうち残すは4月、男子65キロ級の丸山城志郎ー阿部一二三の争いのみ。

◆全柔連は早期決定をめざし、3段階の選考方式をとった。第1段階は昨年11月、女子78キロ超級の素根輝が最も早く代表を決めている。今回は第2段階となり、残る13人のうち一気に12人の決定となった。
 最終の第3段階(4月・全日本選抜体重別選手権)より早く決めた事に、開催国のお家芸ゆえの事情も見える。「メダルは当然」の厳しさ、そこに向けて選手の調整時間確保、何より精神的負担の軽減がある。

◆ 代表発表会見で井上康生男子代表監督(41)が涙を見せた。代表1人1人の名前を読み上げた後、目を伏せ「いまはギリギリで落ちた選手の顔しか思い浮かばないです。永山、橋本、海老沼…」耐えきれず涙があふれた。さらに落選した選手の名前を挙げ「よくここまで戦ってくれたと思う。彼らの思いも背負った上で、責任を持って戦わないといけない」。力のある選手たちを早くふるいにかけざるを得なかった…敗者への思い「武士の情」か。

◆お家芸柔道日本の節目、2000年シドニー五輪柔道。初日に軽量60kg級・野村忠宏と48kg級・田村亮子が優勝し幸先いいスタートを切った。井上康生は重量100キロ級にかかわらず、まさに「一閃」オール一本で金メダルを獲得した。パワー全盛、しっかり組み手をとらない欧州のポイント柔道に流れそうな時代…鮮やかな「一本」柔道を引き戻した。

◆ 勝負の世界「選ぶ側や監督は、毅然とした態度で臨むべきだ」と、井上監督の涙に賛否ある。自らも「こんな場所で一番やってはならないこと、申し訳ありません」と詫びた。
 選ばれ並んだ代表の顔…この選手たちが力を最大限に発揮できる環境づくり、そこに全力を尽くせ。

 次は、1964年東京五輪と同じ聖地・武道館で歓喜の涙を流す!…柔道ニッポン、必ずやってくれる。

【クールなランナー 1人の戦い】
 日本記録保持者の大迫傑(28)が、東京マラソンで自らの日本記録2時間5分50秒を更新する2時間5分29秒をマークした(3月1日)。日本人トップの4位に入り、東京五輪代表3枠目の最有力候補に。8日のびわ湖毎日マラソンで記録を破られなければ、代表に内定する。
 ”一発勝負”MGCでは2位・服部勇馬と5秒差の3位、五輪の代表内定を逃した。残りの選考レースで日本記録を破られなければ、このまま五輪切符をつかめる可能性はあったが、待つことはせず東京マラソンに参戦した。

◆井上大仁らがスタートから2時間3分台を狙う果敢なレース。冷静に一度”引いて”一時先頭集団の背中は遠くなったが、そこから自信の走りを見せつけた。レース後のインタビューではMGCに触れ、「3番になった時から1人苦しい戦いだったんですけど…」クールな男が涙ぐんだ。「自分の体と対話しながら走れたと思う」「自分への挑戦ということで、ケニアに行ったりしてチャンレンジ出来たので」と、1人で耐えることを学んだ。幅広いレース展開に対応、自力の強さも見せ、日本マラソン界を引っ張る存在であることを証明した。

 一方で世界レベルのマラソンは2~4分台、優勝したレゲセ(エチオピア)2時間4分15秒に歯が立たなかった。しかし日本人ランナーは今大会5分台1人、6分台2人、7分台5人とレベルアップは間違いない…メダルに最も近い日本人ランナー、大迫が躍り出た。

<2020.3.2 S>