元次官に懲役6年 家族は

 東京都の自宅で44歳の長男英一郎さんを刺殺したとして、殺人罪に問われた元農林水産事務次官の熊沢英昭被告(76)に懲役6年(求刑懲役8年)判決が言い渡された(16日)。東京地裁の中山大行裁判長は、長男を36カ所以上傷つけ、強い殺意をもってすきを突いた「強固な殺意にもとづく短絡的な犯行」と述べ、長男を支援してきた背景事情を考慮しても執行猶予にはできないとした。
 退廷の時、ある裁判官が「お身体に気をつけて」と異例の声をかけた。

◆検察側は、長男の家庭内暴力が事件背景にあったと認めつつ、引きこもり支援知識や経済力があるにもかかわらず外部に相談していない。長男を支えようとした努力は否定しないが、発達障害に悩みながらもネット上で自分なりに人間関係を築いていた長男の「人生を奪う権利はない」と、酌量の余地は乏しいと主張した。
 弁護側は、長男の暴力は頭を家具や庭の鉄製物置にたたきつける執拗で危険なものだったと反論。相談できなかったのは「精神安定剤を飲まなければ体が震えるほどの恐怖」があり、長男を刺激しないように夫妻は閉じこもっていたと説明。熊沢被告も当日「殺すぞ」と言われて「刺さなければ私が殺されたと思う」「とっさにやむを得ず包丁を取って刺した」…長男の就職支援、犯行後すぐ110番し自首しているとも述べ「執行猶予が相当」と訴えていた。

◆この判決に異議を唱えるつもりはない。法曹界は判例重視、これが前例・指針になってはならないの思いも分かる。
 しかし奥深く重大なこの事件。直前に起きた川崎の小学校バス停襲撃「息子も起こすかもしれない」、家族の命も危ない…自らが子どもを殺害する決意、たとえ恐怖にかられたとしても如何ばかりか。妻が鬱病、娘は自殺したとされる点も考慮されたのか…。

◆この事件には、日本が抱える大きな問題もはらんでいると感じた。
 現代、中高年の子どもによる”引きこもり”や家庭内暴力など問題を抱えて苦しむ親は少なくない。
 40〜64歳で”引きこもり”とされる人は60万人超と推計、多くが「退職」が理由という。「8050」問題と言われるように、80歳代の親が50歳代の子どもを養えず”共倒れ”になっていく。さらには次の支え手、若い世代の”非職”も多い…何とかならないものか。

◆裁かれる法廷に立つ熊沢被告は淡々と、そして目をつぶっていたが「長男のことを本当に一生懸命やってくれた。刑を軽くしてください。お願いします」と、妻が涙声で減刑を訴えると、思わず顔を伏せたという。

◆待ったなしの少子高齢日本。季節外れの「桜」ばかりでなく、やるべきことは山ほどある。それが国や政府、政治の使命だ。

生き難き世!? 絆どこに
<2019.12.17 S>