叙勲 35年前”フェアプレー”

 令和元年、秋の叙勲。中山恭子元拉致問題担当相(79)、歌手・水前寺清子さん(74)ら受章者4113人が発表された。うち民間人が1967人で47.8%、女性は411人で10%を占め、最高となった。また別枠の外国人叙勲受章者、66カ国・地域の136人も発表された。
 日本では年に2回、春と秋の叙勲がある。

◆そんな折、今年の春の叙勲・旭日単光章が贈られたエジプト人柔道家、ムハメド・ラシュワンさん(63)に伝達式が行われた。長年にわたり柔道の普及発展に寄与したことを称えた。
 遡る35年前のロサンゼルス五輪(1984年)、柔道男子無差別級決勝。畳の上には、山下泰裕選手(現日本オリンピック委員会=JOC会長)とラシュワン選手が対峙していた。
 当時無敵の世界チャンピオン、山下選手は前の試合で右足を痛めていて、畳に上がる時でさえ右足を引きずっていた。互いに国を背負っての勝負、金メダルと銀メダルでは大きな違いがあることも分かっていたはず。それでもラシュワン選手は、山下選手の右足を故意には攻めなかった。山下選手はかけられた技をすかしてラシュワン選手の態勢を崩し、横四方固めで一本!悲願の金メダルを獲得した。海外メディアからもその戦いに称賛の声があがり、後に国際フェアプレー賞も贈られた。
 筆者は当時新聞の見出しをつくる仕事についていて、社会面で「ラシュワン 心の技あり」とつけた記憶がある。

◆カイロでの伝達式に山下JOC会長(62)は、ビデオメッセージで「あなたは世界の柔道界に大切な人だ」と祝福した。ラシュワンさんは「山下は私のヒーローで親友。日本の人々との交流は生涯続いていくだろう」と穏やかに話した。

◆来年の東京五輪。柔道は男女7階級の個人戦と男女混合団体が行われる。お家芸だ、メダルラッシュは間違いない…そして胸打つ感動も間違いだろう。

道ひと筋 人間ドラマ
<2019.11.4 S>

*この報道コラムも80回を超えました。これからもニュース、人の喜怒哀楽を見つめ続けていきたいと思います(原則毎月曜)。S