平和の使者 ローマ教皇

 第266代ローマ教皇フランシスコ(82)が来日した。世界に約13億人の信者を抱えるローマ・カトリック協会のトップで、バチカンの国家元首である。今回のテーマは「全ての命を守るため」で、教皇の来日はヨハネ・パウロ2世以来38年ぶり史上2回目。

◆まずローマ教皇は自らの義務とした、被爆地・長崎と広島を相次ぎ訪問した(24日)。
 夜のライトアップされた原爆慰霊碑、広島市の平和記念公園での「平和のための集い」に参列。「核兵器のない世界実現は可能で、必要不可欠と確信している」「正義にかなう安全社会を築きたいと望むなら、武器を手放さなければならない」と訴えた。
 また東日本大震災の被災者との集いでも、多くの人々の「悲しみと痛み」へ祈りを呼びかけ「力を結集すれば必ず復興は果たせる」と力づけた(25日)。福島県いわき市から東京へ避難した高校生は、「僕たちの苦しみはとても伝えきれない。残酷な現実でも目を背けない勇気が与えられるようにともに祈って下さい」と思いを訴えた。
 そして離日直前、自身の出身修道会「イエズス会」が設立した上智大学を訪問、学生たちと触れ合った。

◆25日には天皇陛下が、ローマ教皇を皇居・宮殿に招き穏やかな雰囲気の中、約20分会見。皇室とバチカンの交流は、陛下が留学中の1984年に同国を訪問、当時の教皇ヨハネ・パウロ2世と面会されている。

◆ローマ教皇フランシスコには、パパPapaという親称がある。一般人と気軽に話し、時には写真やサインまでも応じる。身近な教皇として新時代を築きつつある「平和の存在」。にこやかな表情で大衆の中を移動する車も、かつては左右の窓に防弾ガラスが入っていたが、今はなく”吹き抜け”状態だ。
 1987年にも宣教活動視察のため日本を訪れたことがあるが、今回は教皇としての来日。日本での4日間を「この国での滞在は短かったが、大変密度が濃かった」と語り、ツイッターでも「深く感謝…」と発信した。そして「貧しい人、声さえ上げられない人の声を代弁する」として、効率重視の社会にも警鐘をならした。

◆ちょっと気になったのは、来日直前に「ローマ法王」から「ローマ教皇」に表記(報道ベース)が変わったこと。38年ぶり来日とはいえ、さて認識のほどは? 理想と現実、宗教と政治、なお難しい問題も抱える…大事なのは「平和の使者来日」をどう平和に生かしていけるのか、日本が試される国際社会。

全ての命を守るため
<2019.11.27 S>

侍J プレミア12初優勝

 野球の東京五輪予選を兼ねた国際大会「第2回プレミア12」決勝は日本代表「侍ジャパン」が前回覇者の韓国を5―3で破り、初優勝を果たした。主要国際大会では、2009年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)以来の優勝。

◆日本は山田哲人の3ランで逆転、7、8、9回の必勝リレーで韓国の反撃をかわした。大会のMVP(最優秀選手)には侍Jの4番として3本塁打13打点の鈴木誠也が輝いた。陰のMVPは、7回甲斐野央-8回山本由伸-9回山崎泰晃の継投だろう。
 試合終了直後、采配をとった”兄貴的存在”稲葉篤紀監督(47)の涙が印象的だった。

◆プレミア12は世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催。米国、日本、韓国、メキシコ、豪州など12ヵ国・地域を選び、4年に1度開催される野球の代表戦による国際大会。野球・ソフトボールをオリンピック競技にする”後押し”大会とも言える。国によって温度差、選手派遣や対応も違っている。
 ゆえに、メジャーリーガー参加は0、現役大リーガーが多く参加しているWBC(MLB・選手会が立ち上げたWBCI主催)に比べると大会レベルが低いことは否めない。

◆baseballの国・アメリカは、野球はメジャーリーグだけとの自負か…WBCですらベストメンバーを揃えない。
 ルールの点でも、プレミア12に球数制限はないがWBCは球数制限がある。メジャーの選手を使いすぎてチームから反発がくるからだ…選手個人にも「名誉」以外に、見合う金銭的額面ではない点なども指摘される。また今回は日本と台湾での開催。予選から決勝まで米本土で戦えるWBCとは違う。国による違いや悩ましい課題は続かざるを得ないだろう。

◆明るいニュースでもあり「世界一だ」の報道が目をひいたが、今ひとつしっくり、納得できないのは…日本とメジャー軍団の対決を見たいのが、野球ファンの本音?
 日本は事情を抱えつつ、ベストと言えないまでも錚々たるプロ野球メンバー。「侍ジャパン」はドリームチームに変わりはない…国民に何かを与えてくれる。

日の丸背負う 重み
<2019.11.18 S>

凛と 2人の日本女性

 凛とした2人の日本女性が逝った。その生き方をまだまだ見せ続けてほしかった…寂しい限りだ。

◆女優・八千草薫さん88歳。大阪出身。
 幼い頃に父親を亡くし、宝塚歌劇団入り、その後女優となった。
 「宮本武蔵」でお通役、「男はつらいよ 寅次郎夢枕」のマドンナ役や「くじけないで」100歳の詩人柴田トヨ役…ドラマでは不倫の妻を演じた「岸辺のアルバム」、古き不器用な板前の母役「前略おふくろ様」も忘れがたい。ふわ〜とした柔らかな品、清楚な奥に秘めた芯の強さ…重ねてきたその齢その時に、魅力がじわりとあふれた女優。

 19歳の時に19歳年上の谷口千吉監督と結婚。葛藤もあり、芸能界引退を考えた時期もあったという。そして夫婦で本格的な登山をするようになる。八千草さんは、インタビューで人生で一番大事だと思うものは?と聞かれ「難しい質問ねぇ(しばらく考え)…やっぱり愛かしら」。
 我ら還暦世代には、永遠の憧れ。

◆緒方貞子・元国連高等弁務官92歳。東京出身。
 緒方貞子さんに「貞子」と命名したのは曽祖父の犬養毅元首相。首相官邸へ乱入した海軍将校たちに「話せば分かる」とたばこを勧めたという犬養が、「問答無用」と銃撃された時、貞子さんは4歳。記憶はなくても、いつ何が起こるか分からない「世の非命」は、その生涯を導いたのではないだろうか。

 政治に翻弄された難民、子どもたちを救うことに生きた緒方さん。机上より危険な場所にも自ら足を運んだ。過酷な現場でも、時にユーモアやちゃめっ気を忘れない素顔もあったという。かつて、難民について「かわいそうだからしてあげるというものではない。尊敬すべき人間ですから、その人間の尊厳というものを全うするために、あらゆることをして守らなきゃいけないという考え方です」ときっぱり述べている。
 今、ルワンダなど世界各地に命をつないだ「オガタ サダコ」と名付けられた子どもたちがいる。

◆既存のルールにとらわれない信念、それでいて普通の思い…人間の本質を貫いた2人。

お疲れ様 “天命”の人
<2019.11.11  S>

叙勲 35年前”フェアプレー”

 令和元年、秋の叙勲。中山恭子元拉致問題担当相(79)、歌手・水前寺清子さん(74)ら受章者4113人が発表された。うち民間人が1967人で47.8%、女性は411人で10%を占め、最高となった。また別枠の外国人叙勲受章者、66カ国・地域の136人も発表された。
 日本では年に2回、春と秋の叙勲がある。

◆そんな折、今年の春の叙勲・旭日単光章が贈られたエジプト人柔道家、ムハメド・ラシュワンさん(63)に伝達式が行われた。長年にわたり柔道の普及発展に寄与したことを称えた。
 遡る35年前のロサンゼルス五輪(1984年)、柔道男子無差別級決勝。畳の上には、山下泰裕選手(現日本オリンピック委員会=JOC会長)とラシュワン選手が対峙していた。
 当時無敵の世界チャンピオン、山下選手は前の試合で右足を痛めていて、畳に上がる時でさえ右足を引きずっていた。互いに国を背負っての勝負、金メダルと銀メダルでは大きな違いがあることも分かっていたはず。それでもラシュワン選手は、山下選手の右足を故意には攻めなかった。山下選手はかけられた技をすかしてラシュワン選手の態勢を崩し、横四方固めで一本!悲願の金メダルを獲得した。海外メディアからもその戦いに称賛の声があがり、後に国際フェアプレー賞も贈られた。
 筆者は当時新聞の見出しをつくる仕事についていて、社会面で「ラシュワン 心の技あり」とつけた記憶がある。

◆カイロでの伝達式に山下JOC会長(62)は、ビデオメッセージで「あなたは世界の柔道界に大切な人だ」と祝福した。ラシュワンさんは「山下は私のヒーローで親友。日本の人々との交流は生涯続いていくだろう」と穏やかに話した。

◆来年の東京五輪。柔道は男女7階級の個人戦と男女混合団体が行われる。お家芸だ、メダルラッシュは間違いない…そして胸打つ感動も間違いだろう。

道ひと筋 人間ドラマ
<2019.11.4 S>

*この報道コラムも80回を超えました。これからもニュース、人の喜怒哀楽を見つめ続けていきたいと思います(原則毎月曜)。S

即位礼正殿の儀 継ぐ

 さきに、日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。
 上皇陛下が三十年以上にわたる御在位の間、常に国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その御心を御自身のお姿でお示しになってきたことに、改めて深く思いを致し、ここに、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います。
 国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。

◆即位の礼の中心儀式「即位礼正殿の儀」が令和元年10月22日、国事行為として皇居・宮殿で執り行われた。
 儀式は約2千人の参列者が見守る中、宮殿「松の間」で始まり、鉦(しょう)の合図で参列者が起立すると、天皇陛下の側近である侍従らにより玉座「高御座(たかみくら)」と隣の「御帳台(みちょうだい)」の帳が開かれた。
 天皇陛下は古式装束「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」に身を包まれ、皇后さまは十二単のお姿。参列者が鼓を合図に敬礼した後、陛下が即位を内外に宣明された(冒頭全文)。
 外国からは191の国・機関の元首や王族、政府高官ら423人、国内からは皇族や三権の長ら1576人の計1999人が参列した。陛下のお言葉の後、安倍晋三首相が祝辞の寿詞を述べ参列者と万歳三唱で祝った。

◆陛下は、上皇さまの平成のお言葉を色濃く反映されたと感じた。
 「国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを…」。上皇さまを尊敬され、国民とともに象徴としての決意、そして次代へつないで行く強いお心があふれ出たお言葉だった。

◆「即位礼正殿の儀」が東京(皇居)で催されるようになったのは平成からで、それまでは京都御所(旧皇室典範に明記されている)。京都人は今も、天皇陛下が京都入りする際は「お帰りなさい」。ゆかりの「鞍馬の火祭」が始まり、京都タワーはライトアップで祝った。
 伊勢神宮内宮で「即位礼当日祭」が行われ、東京スカイツリーも”日の丸”のライティングがされた。この日列島は奉祝に包まれた。

◆夜に催された「饗宴の儀」も上皇さまの前回を踏襲された。宮内庁による舞楽「太平楽(たいへいらく)」が披露され、食事は和食で、まつたけやくりなど秋の味覚も取り入れた合わせて9品が出された。また世界各国からさまざまな文化的な背景を持つ賓客が訪れたことに配慮したメニューも用意された。和やかな饗宴は午後11時20分ごろまで続いた。

◆台風19号被害などに配慮し延期となった「祝賀御列の儀」(パレード)は11月10日。その前日に「国民祭典」が開かれ、人気アイドルグループ「嵐」が奉祝曲を歌う。そして14、15日には、天皇一代に一度だけ行われる重要な儀式「大嘗祭(だいじょうさい)。さらに来年4月19日に立皇嗣の礼(りっこうしのれい)が予定され、秋篠宮文仁親王が、自らの立皇嗣=皇位継承順位第1位=を国の内外に宣明する。即位の礼儀式は続く。

令和日本人 奉祝
<2019.10.28 S>