6歳未満男児 脳死移植

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◆群馬県内の病院に入院中の6歳未満の男児が臓器移植法に基づく脳死と判定され、臓器提供の手続きに入ったと、日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)が発表した(2月17日)。脳死と判定された6歳未満の子どもからの臓器提供は10例目、10歳未満の女児らに移植。
男児の両親は「人から求められると何でも分け与える優しい息子でしたので、臓器移植という選択が息子の意思に沿うものであると信じております」などとするコメントを発表した。
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◆臓器移植法は1997年(平成9年)に施行、「生前本人が文書で意思を示していること・15歳以上」と定められた。しかし法的脳死移植の実施まで約1年半の時間を経る。
今からちょうど20年前の1999年(平成11年)2月、くも膜下出血で高知赤十字病院に運ばれた40歳代の女性が脳死と判定された。女性は「ドナーカード(臓器提供の意思)」を所持し、家族も臓器提供を承諾した。それまで空白の30年余、日本初の法的脳死移植が行われることになった。
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◆その日、私は新聞社で整理部(記事判断し見出し、レイアウトする部署)デスクとして朝刊当番だった。大声が飛び交い騒然とした異様な雰囲気の編集局内。
「患者に見えた命の光」。助かる命に”喜び”をレシピエント(臓器提供を受ける人)側への思いを乗せ、迷わず大見出しを打った。臓器提供をしたドナー側への思いを欠く偏ったものだったと、のちに反省した。「命のバトン…」の見出しにも「人の命は厳粛なもの、バトンとは何ごと!」とお叱りもいただいた。
現場には記者が殺到しドナーの家族を取材した。歴史的瞬間を伝える使命、仕方がない動き。しかし、肉親の死と隣り合わせのドナー家族の思いは…。
苦い記憶と日本語の深さ、伝えるとは何かを否応なく教えられた。
それからほぼ3日後、手術が始まった。記事にはこうある。
「受け継がれる命が高知から全国へ飛んだ。日本の移植医療は新しい歴史の時を刻んだ 」
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◆その後2010年、改正臓器移植法が成立する。本人の意思表示がなくても家族の同意・承諾があればよく、15歳未満からも臓器提供が可能になる。
それでも脳死移植は期待したほどは増えなかった。そこには日本人の死生観だけでなく、提供施設・病院側の整備や技術、協力環境が整っていない点もあるのではないか。事実、家族が臓器提供を申し出たにもかかわらず、移植に至らなかった例は5年間で13件に上った…国が牽引、フォローする時代なのかもしれない。
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◆脳死移植の数という点だけ見れば、日本は先進国の中で明らかに遅れをとっている。人口比100万人に欧米は30〜40人、韓国10人、日本は0.7人という(2015年)。
米では1万人近くの臓器提供者が現れる年もあり、また生前の意思表示がなければ臓器提供承諾と解釈する国もある。
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◆時間切れで亡くなる患者、待ち切れず、高額費用にかからわず海外で移植を受ける患者も後を絶たない。
プライバシー保護、経緯の透明性確保を根本に臓器移植が進み増える道はないものか。
男児の尊い命が、誰かの希望の命となり生き続けることを祈ってやまない。
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命をつなぐ いつの世も
<2019.2.25    S>

池江璃花子さん もう一つの挑戦

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◆日本女子競泳界のエース、池江璃花子さん(18)が白血病を公表した(2月12日)。世界中に衝撃が走った。個人12個リレー9個の日本記録を保持、来年に迫った東京オリンピックでは金メダルを期待されている。
苦しく悔しい胸の内はいくばかりか…ツイッターで18歳自らが明かした力強い言葉に頭が下がる。
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◆国内外からのエール、励ましの声が止まない。
同じ白血病から復帰を目指しているサッカー・アルビレックス新潟の早川史哉選手 やテニスの錦織圭選手、競泳女子の世界的スター米レデッキー選手、バッハIOC(国際オリンピック委員会)会長、歌舞伎界の市川海老蔵さんら各界から多くの応援が寄せられた。スポーツって素晴らしい。
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◆一方で日本語を知らないのか、と思う発言。桜田義孝五輪大臣が「本当にがっかりしている」「1人がリードすると皆、その人につられて全体が盛り上がる。そういった盛り上がりが下火にならないか、若干心配している」と語った。「治療に専念して元気な姿に戻ってほしい」とも話し、お詫び・撤回会見を行ったががっかりだ。政治家の言質ばかりを捉えるのもどうかと思うが、あまりにも言葉の重みがない! オリンピック、日本は大丈夫か?
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◆池江選手は、骨髄移植に注目が集まっていることに感謝込めて「同じように辛い思いをしてる方たちにも、本当に希望を持たせて頂いてます」。
白血病を公表した日、骨髄移植ドナー登録(年齢は健康な18歳~54歳)が急増し通常の日の50倍になった。うれしいじゃないか!日本 。
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◆池江さんはこう綴った。
「神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はない」。そして「必ず戻ってきます」と締めくくった。
しなやかな泳法、さわやかな笑顔を皆楽しみにしている…来年の東京五輪に間に合わなくいいから。
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輝く笑顔 必ず戻ってくる!
<2019.2.18    S>

大阪都構想 どこへ行く

◆大阪維新の会結成以来、悲願の「大阪都構想」。住民投票時期について、公明党と維新が昨年末から激しく対立していたが、松井一郎知事(大阪維新の会代表)は8日、「夏の参院選と同日実施はもう無理だ。自分の権限のある間に実現を目指す」と語った。知事の任期満了(11月26日)を期限として、目標にしてきた参院選との同日実施を断念した。
公明党府本部代表の佐藤茂樹衆院議員も、住民投票実施を「知事の任期中」と公明側が主張する合意書について「効力は生きている」。松井知事と吉村洋文市長は辞職し、4月の府議・市議選とのダブル選も辞さない強硬姿勢を見せていたが回避される見通しとなった?
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◆水面下で落とし処を探る”極秘会談”が続いていた。公明幹部は、法定協が空転していることを受け、維新に一定配慮を要請。維新が3月中の協定書(制度設計)完成をずらせば、知事・市長の任期中の住民投票を受け入れる姿勢を示したという。
「採決せいよ」「ええかげんにせい」 恥ずべき怒号が飛び交い、議論にも入れなかった法定協はようやく再開された。
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◆住民投票実施には、府・市議両議会で協定書を可決しなければならない。両議会で維新は第1党だが、過半数に届いていない。
協力を得ざるをえない公明と維新の間で交わされた、2017年4月の「任期中に住民投票」合意文書は密約とも言われた。一転した状況に、他会派からはまた密約かとの声も漏れてきている。
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◆一方で、まだまだ”落ち着かぬ発言”も…松井氏は府・市両議会選が行われる4月の統一地方選よりも前に、法定協で都構想の協定書をまとめることが、実施時期を話し合う大前提になるとも強調。「協定書がまとまらないのに、住民投票の時期だけ約束しても、机上の空論」…改めて公明に協定書の可決に応じるよう求めた。維新の会は9日の党大会でも「(都構想は)政治改革の原点」と位置付け、改憲議論も主導する2019年活動方針を採択した。
ダブル選リミットは3月中旬。まだ知事・市長辞職、入れ替え立候補の可能性はゼロとは言えない。
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◆約4年前の2015年5月17日に行われた「大阪都構想」を問う住民投票。投票率67%の高い関心の中、賛成694844票(49.6%)・反対705585票(50.4%)のわずか1万票余りの差で否決された。当時の橋下徹市長は引退した。
あの時とは大阪市民の”空気感”が違い、大阪都構想への熱は下がっていると言える。
維新にとっての最重要目標ではあるが、連敗は許されない。さらに現状の票読みもにらみ、”立ち止まり”戦略は懸命である。機はいずれ熟してくるはずだ。
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◆今回の”騒動”で痛感したのはメリット・デメリットを含む政治家側の説明不足、説明責任を果たせという事…今のままでは市民の理解は得られない。一方で我々も勉強不足を反省し、自らの”行き先”を注視すべき時だ。市民こそが問われているのかもしれない。
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急がば説明 大阪の未来
<2019.2.11    S>

母娘心中 救えなかったのか

仙台市内の住宅で昨年11月、小学2年生の長女と母親が無理心中したとみられる事件があり、この長女の父親が1月19日に記者会見し、2人が死亡したのは長女が通っていた学校でのいじめが原因だと訴えた。

長女は1年生からいじめを受けていたといい、父親は「学校側は”お互いさま”で済ませたかったらしい」「学校にも仙台市教育委員会にもさじを投げられた」と沈痛な思いを語った。
第三者委員会による速やかな調査を求める要望書を、郡和子市長と佐々木洋教育長に提出した。
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◆いじめは犯罪だ。
両親は、校長や市教委に何十回も相談したという。再三の悲痛な相談に校長は「マニュアルに沿って対応したい」「今から動きます」と、先延ばしの繰り返しだったという。
いじめた相手の親との話し合い前に、まとめた資料を渡すということまで行われていた。
母親は担任に相談したが、担任は子ども同士の話し合いを勧め、当該の子どもから「いじめていない」という答えを聞いていたという。
被害者も加害者も小学校低学年の”幼児”で難しい問題も含むが、教職員はもっと踏み込まなければいけない。まず何より被害を訴えた子どもに寄り添うべきだ。加害者が軽い気持ちであっても「いじめはダメだ」と説き、厳しく対処するのが使命ではないのか!信じられない校長、担任だ。
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◆ようやく8月末に母親同士の話し合いが設けられたが、相手の母親は「今さら謝れとでもいうのか」と話にならなかったという。
母親は心療内科に通うようになり、長女も心身とも調子を悪化させていった。
学校、教育委員会などに相談し尽くして、何も進まない状況に結局”泣き寝入り”しかないのかと家族は絶望し追い詰められて行ったという。そして11月末に母娘は亡くなった。
小学2年生の長女は「いじめられてなにもいいことないよ。しにたいよ、しにたいよ」と平仮名でメモを残していた。
なぜ救えなかったのか!学校に本当の意味での”相談室”…子どもたちや保護者の叫び、そして教職員の声を聞く場所はなかったのだろうか。
◆会見した父親「たくさんの夢を語っていた娘と、娘を一番愛していた妻がどれだけつらい思いをしていたか考えると無念でなりません」。
この事なかれ主義の学校、教育委員会に教育を行う資格はない。加害者側が心から反省する日が来ることも望む。
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◆闘っても追い込まれ、自殺するほど辛かったら「そんな学校なんて行かなくてもいいんだ。未来はあるんだから」と、周囲の誰か声を出せなかったのか…残念でならない。
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いじめ許すな!命救え
<2019.2.4 S>