“霊長類最強女子” お疲れさま

レスリング女子、選手兼日本代表コーチの吉田沙保里さん(36)が引退会見を行った(1月10日)。
◆”霊長類最強女子”と言われ、五輪4連覇はならなかったが世界大会16連覇や国民栄誉賞の偉業にふさわしく、多くの報道陣が駆けつけた。リオデジャネイロ五輪以降試合に出場できていない吉田さんに対して、「今やタレントだ」と厳しい声もあった。しかし、日本女子レスリングを世界一流と認めさせ、引き上げ保ち続けた功績は揺るがない。今の日本女子レスリング黄金時代の礎を築いた。
白のジャケットで登場し、約40分間会見した姿は清々しく見えた。「もうレスリングは全てやり尽くした」「リオの銀のとき、負けた人の気持ちはこうだったんだ…」「(子どもたちへ)最後まで諦めない気持ちを」など、質問する記者に向き直して答えた。
パワハラ・暴力問題に揺れたレスリング界。栄和人元監督に対しても「私を強く育ててくれた」と、きっぱりと感謝の言葉だった。3歳からレスリングを始めた地、故郷・三重に対しても「応援していただき、励みになった」…同郷の1人として嬉しかった。その自然体にレスリングの強さというより、精神面の強みを感じた。
◆会見での言葉抜粋。
「私、吉田沙保里はこのたび、33年間のレスリング選手生活に区切りをつけることを決断いたしました。…日々迷いながらここまで来ました。また若い選手たちが世界の舞台で活躍する姿を多く見るようになり、女子レスリングを引っ張っていってもらいたいという思いにもなりました。あらためて自分自身と向き合った時にレスリングはすべてやり尽くしたという思いが強く、引退することを決断いたしました」
―お父さんにはどう報告?
「引退会見するとか父は思っていなかったのでびっくりはしていると思う。でもこういう形で応援してくださった国民の皆さん、ファンの皆さんに感謝の気持ちを伝えることは大切なことだと思うので、この場を設けさせていただいたのですが、本当によく頑張ったというふうに天国の方から言ってくれていると思います」
―次の夢は?
「いろいろありますが、レスリング一筋でここまで来たのでレスリング以外のこともやっていきたい思いも強いですし、やっぱり女性としての幸せも絶対につかみたいなって思ってます。来年の東京五輪もありますので、自国開催でもあるのでそこで盛り上げていけたらという思いも強いです」
◆テレビ番組に出演した吉田さんは、「最も影響を受けた選手」について語った。引退会見で質問がなく、触れる機会がなかったという人物の名前を挙げた。2学年上の山本聖子選手(夫はメジャーリーガー・ダルビッシュ有)だ。対戦成績は5勝5敗。10代の頃、吉田さんは山本選手が「ずっと勝てなかった相手」「雲の上の人」で、名前を聞けば戦う前から勝てないと感じた存在だったと話した。
レスリング人生で最も印象に残っている試合も、山本選手と戦った2003年の全日本選手権決勝。勝ったほうが女子レスリング初の五輪出場を果たすという天覧試合で、吉田さんは「ライバルであった山本選手に勝った瞬間は『これで代表になれる』とうれしかった」と振り返った。以降、吉田さんにライバルと呼ばれる選手は現れなかったのではないか!?

◆リオ五輪で銀メダルに終わった後、母の幸代さんに抱きつき「お父さんに叱られる」。その母は「霊長類最強女子と言われますが、私にとっては可愛い娘」と静かに語った。報告のとき「あなたが決めたのなら…」と涙はなかったという。
そして父であり師・栄勝さんの急死から約5年になる。それも一つの区切りになったのではないか。吉田さんの強さの根本は家族への絆、思い…。
誠実に 継ないだ夢
<2019.1.14    S>