ゴーン会長逮捕 ルノーvs日産

カリスマ経営者と言われたカルロス・ゴーン日産会長(64)が逮捕された(11月19日)。5年間に役員報酬を約50億円過少に申告したとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)の容疑。ゴーン容疑者は否認しているという。

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◆突然に見えた逮捕。実は3つのタイミングが一致した必然の時だった。根底にルノーvs日産。

1.ゴーン下ろし

1999年、ゴーン容疑者は”瀕死”の日産を立て直すために仏ルノーから送り込まれた。日本流経営に超合理的経営を持ち込み、リストラや工場閉鎖を次々断行しV字回復を果たす。日産という企業にとっては恩義ある人物。しかしそれから長すぎる約20年間、ルノー・日産・三菱自すべての会長兼務に…権力が集中し”イエス役員会”になり、ゴーン容疑者だけが決定権を持つに至る。

2.脱ルノー

水面下では、ルノーは日産を経営統合(吸収)しようと動いていた。ルノーは日産株を43.4%持つが、日産はルノー株を15%しか持っていない。一方、世界での販売台数は日産約580万台に対し、ルノー約380万台。日産の収益がルノーに流れ、支えている現実。15%の株を持つ仏政府がゴーン容疑者に「ルノー会長を続けたいなら日産を傘下にせよ」と指示したとか…日産は仏企業にはなりたくない、日本企業として生きていきたい。

3.司法取引

東京地検特捜部と日産専務執行役員ら数人との間で、「司法取引」の合意が成立した。核心に迫る情報を提供する代わりに、起訴の見送りや刑を軽減するということ。

日本国内での企業の司法取引は2例目。「クーデターではない」と西川広人・日産社長は反論したが、裏返せば企業内だけでやる力がなかったと言える。

よくできたシナリオ⁈

◆故郷ブラジルや生活したレバノンなど4カ国にある豪邸、他の役員の報酬付け替え、家族の豪華旅行や食事…次々と疑惑が取り沙汰されている。東京地検特捜部は業務上横領、特別背任、脱税をにらみ捜査を進めている。

しかし、それで終わりなのか?他にも何かある気がしてならない。

◆日仏は経済閣僚が会談し「ルノー・日産連合」維持の支持で一致した。安倍晋三首相とマクロン大統領まで会談し「企業同士で解決するべき問題」。釈然としない。事前に方法がなかったのか、企業争いが国にまで波及?…それだけ重要産業と言えるが、企業の誇りは!と情けなくも見えてくる。

11月29日には事件後初のルノー・ティエリー・ボロレCEO代理、日産・西川社長、三菱自・益子修CEOのトップが、今後の3社連合(アライアンス)運営について協議した。「共同でリードしていく」という合議制が結論となったが、「3社連合のトップにはルノーCEOが就く」という規定はなお残っている。

長くに渡り「ゴーン支配」に黙り、質すことのできなかった無意味な役員会…日産の企業責任も厳しく問われるべきである。

◆この事件は、日本と海外のとらえ方の温度差も露呈した。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは社説で、ゴーン容疑者の勾留中の取り調べには弁護士が同席せず、資金流用疑惑がメディアに次々とリークされる状態は「宗教裁判」のようだと批判。最大20日間の勾留が認められ、再逮捕もできる。暴力団の取り調べならいざ知らず、犯罪歴のない国際企業の幹部には適切ではない。「共産主義の中国の出来事なのか?」と疑問を呈し論評した。

◆リオデジャネイロ生まれのゴーン容疑者。最終的にはブラジル大統領をめざしている、とも言われている。徹底した合理化を進め、「コストカッター」との異名…切られる痛みを知らず、信用までも”切って”しまったことは間違いない。

企業の正義 どこにある⁈

<2018.12.3    S>